不完全でパーフェクト

魔女 BL二次創作とハロプロ

10. テンセント版ドラマ『三体』

Netflix版ドラマ化が話題の中国SF小説『三体』のテンセント版ドラマ全30話をようやく完走。昨年10〜12月にWOWOWで放送された際の録画を約半年かけて視聴した。序盤〜前半のテンポがあまりにも合わなくて何度も断念しかけたものの無事に最後まで走り切れて良かった。特に後半10話くらいは原作に忠実かつ演出もダイナミックでとても楽しめた。

序盤の「何が起こっているか分からない」混沌が後半のスピード感を加速させる効果も持っていたように思うが完走できたからこそ言えることであって、話がまったく進まない序盤を観続けるのがとにかく苦痛だった。尺を取りすぎという不満に加えて演出もことごとく冗長に感じられた。中国ドラマ独特のテンポなのかと思ったら後半ドドドドッと面白くなったので今までのは何だったんだ……と驚いた。

実写化にあたり最も興味があったのはVRゲーム「三体」の世界をどう描くかという点で、これはとても良かった!ゲーム内の壮大な光景、「脱水」の表現、むごたらしく滅亡する文明、いずれもスケールが大きくて面白かった。古箏作戦で「審判の日」号がスライスされて崩れ落ちる姿は大迫力だった上、「飛刃」が迫る様子を丁寧なカメラワークで表しているのも面白かった。

物理学者の汪淼(ワン・ミャオ)と警察官の史強(シー・チアン)のバディも熱い。初めは衝突してばかりだった二人が息を合わせて問題に立ち向かっていく姿には引き込まれる。史強が汪淼の娘・豆豆ちゃんの子守りをするエピソードが微笑ましくて好き。史強の部下として配される女性捜査官・徐冰冰(シュー・ビンビン)がとても魅力的なキャラクター。推しです。仕事ができてかっこいい!26話で史強の前で涙したのを見てこちらもホロッとしてしまった。この三人が同じ画面にいるだけで嬉しくなる。ドラマオリジナルのジャーナリスト慕星(ムー・シン)ちゃんも良いキャラクター。取材シーンは情報を効率良く提示する重要な役割があると改めて実感。個人的に一番好きなのは序盤に登場する天文学者の沙瑞山(シャー・ルイシャン)。みんなこの人のこと好きだよね?かわいいフォルムとおどけたしぐさに加えて研究者としての真面目な顔……魅力的すぎる……あとキャラクターと言うのは微妙だけど三体人のビジュアルがかなり好み。

30話を通して結果としてはかなり楽しめたのだが、予想通り文化大革命の描写はかなり抑えられている。政権の意向が反映された改変。この物語の鍵を握るキャラクター葉文潔(イエ・ウェンジェ)に大きな影響を与えた文革の描写が大幅に減ってしまったため、彼女がなぜ行動を起こしたか説得力に欠けているように思われ残念だった。

序盤がかなりスローな展開だったので30話でどこまで進むのかと心配していたが、原作の第一部を描ききっている。続編の制作も決まっているとのことでとても楽しみ。