不完全でパーフェクト

魔女 BL二次創作とハロプロ

5. 映画『カラオケ行こ!』

原作ファンの感想。

好きだった点

・原作とは別物だと制作陣も早々に割り切っていた印象。原作の持つシュールな雰囲気、独特の間合い、温度のコントロールは非常に稀有なもので、再現することは無理だと思っていたのでは。それもまたリスペクトの一つの在り方だと感じたし、原作の偉大さを軽んじていないという意味で安堵した。

・原作を踏襲すると聡実のモノローグばかりになるが、そうではなかったところに「映画化する意味をよく理解している」人たちによって作られているのだと思わせられた。

・齋藤潤さんの聡実があまりにも良すぎて感動した。 キラキラ。命。聡実、生きている……。狂児が「聡い果実」って口にしたけど本当にその通りだった。聡い果実。表情もたたずまいも良かったが、やはり「紅」の歌唱シーンが素晴らしすぎた。美しいソプラノの最後の爆発的な輝き、青春を力いっぱい振り絞るような声に内臓がびりびり震えて涙が止まらなかった。齋藤さんでなければ演じられなかった聡実でした。ありがとうございます。

「紅」の歌詞をストーリーに生かしているのが非常に良く、そう来るか〜!と感動した。私自身が映画におけるこういう間テクスト性に弱いのだが、聡実の熱唱がより味わい深くなった。

リトグリ「紅」良すぎた!

 

好きではなかった点

・あれこれ詰め込みすぎ。「あれはあれ、これはこれ」と言いつつ、さすがに別物にしすぎではという気持ちはぬぐえない。全体的に野木亜紀子カラーが強すぎる。 あの原作にここまで要素をもりもりに乗せる必要が……?

・登場する小道具が多い。傘、ビデオテープ、音叉、合唱の手引き、おまもり……キーアイテム候補が多すぎて生かし切れていなかった。原作で効果的に使われていたおまもりの存在感が薄れてしまった。

・和山ワールドの「閉じられた雰囲気」とは真逆の「開かれた」話だったが、その広がりが特に心地良くもなく、ただ登場人物を増やしたように感じられた。

・一緒に映画を鑑賞していた友人の存在意義。さすがにオリジナル要素として強すぎたし、聡実にこんな友人がいることに驚いた。いやいても良いんだけど。 こんな友人もいて狂児もいるってさすがに贅沢盛り合わせ(?)のような。不吉な彗星のような狂児のとんでもない輝きがかすんでしまった。

・劇伴が好きになれなかった。組のみんなにカラオケで指導した後〜車で小指見つける前に入っていたコミカルな音楽が特に違和感あった。 殺されるかと思った、もうやめたいという聡実の心情と合っていなかったように感じた。モノローグを削ることでただでさえ心の動きが分かりづらくなっているので、劇伴にやれることはもっとあったのでは。「紅」で爆発させるならもっと抑えたほうが良かったと思うし。中途半端だった。

 

綾野剛さんの狂児は「綾野剛さんの狂児」で良かったです。 総じてとても楽しかったです。